誰かに何かをしてもらってまで自分の望みを叶えたいなんて思ったことはなかった。周りには優しくて他人想いな人がたくさんいると思うけれど、みんながしたければすればいいし、嫌ならやらなければいい。そんな風にしか考えたことがない。
親にも、兄にもわがままは言わない。そんなことをしなくたって十分満ち足りているから。その方がずっと、自分らしくいられる気がするから。
「ありがとう、助かっちゃった」
頭ひとつ分高い位置にある大和の顔を見上げ、瑛二はタオルで手を拭きながら礼を言った。「おう」とぶっきらぼうに返事をし、グラスを洗い終えた大和は水を止める。
食事を終えたあとのキッチンには、片づけをする二人しか残っていない。
多忙を極めているメンバーばかりだ。瑛二と大和も御多分に漏れず過密なスケジュールを強いられているわけだが、当番制になっている寮での生活の中ではこれも仕事の一つに近しい。
火曜と水曜は瑛二が食事当番。もちろんアイドルの仕事を優先させた上で、である。
当番制に不満はないし、料理も洗い物も苦手じゃない。それに誰かにやってもらうより、自分に任せてみんなにはゆっくりしていてもらう方がむしろ気が休まった。
「めずらしいな、瑛二がおれに手伝わせるなんて」
食器棚に茶碗を並べながら、シンクの前に立つ瑛二を振り返って大和が言った。帰宅してすぐにシャワーを浴びていたからか、緑がかった明るい金髪がぴょこぴょこ跳ねている。かわいいなあ、と口には出さないけれど、思っているのは伝わっていそうだ。
「大和と一緒にいたいと思ったから」
大和が部屋着にしているライブTシャツの裾を掴んで少し背伸びする。目を閉じると大きな手のひらが頬に触れたのがわかった。
ほんの数秒。触れ合うだけの短いキス。
腰を抱かれ、額にもう一度唇があたる。
「大和」
瑛二からキスを仕掛けることはできない、もどかしい身長差。でも欲しいときはいつも大和がしてくれる。
「お風呂あがってから、部屋に行ってもいい?」
小さく首をかしげる。瑛二を抱いていた手を離し、「明日の仕事は」と大和が短く訊いた。
「お昼から」
「わかった」
あとでな、と軽く手を振り大和は台所から出て行った。
そっけなく見えるけれど、照れているだけだ。それを知っているから舞い上がってしまう。
寝間着を手にして共用のシャワールームに向かい、ライブの早着替えみたく服を脱いだ。鏡の中で目が合った自分は、だらしなく思えるくらいに幸せそうな顔をしていた。
「おじゃまします」
律儀にノックをし、静かに扉を閉めて鍵をかける。大和は読んでいた台本から視線を外して曖昧に「おう」と返事をした。
大和の部屋は物が少なく、言葉を選ばずに言うととても殺風景だ。特に最初はひどくて、ベッドがどっかりと置いてあるのみだった。今はナギからもらったラグが敷いてあるのと、瑛一から譲り受けた本棚(台本が適当に詰まっているだけ)、ヴァンのお古の小さな机が置いてある。それぞれ好みが違うせいでちぐはぐだが、大和はあまり気にしていないようだ。
「これ、お願いしてもいい?」
ドライヤーを差し出しながら言うと、大和はそれを受け取って「ん」と床を指さした。大和がベッドに座って、足の間に瑛二は腰を下ろす。乾かして来いよと大和は言うけれど、時間が惜しかった。少しでも一緒にいたい。そう思うのは、なんだかんだ言って瑛二だけではないはずだ。
大きな手のひらが髪を掬う。それに加えて、心地良い温風。思わず気持ちがのぼせあがってしまう。
「このまま寝ちゃいそう」
「何しに来たんだよ。……ほら、だいたいかわいたろ」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
「ありがとう」
本体にコードが巻き付いた状態のドライヤーを受け取り、二人は数秒見つめ合った。早く触れたい。触れてほしい。ベッドに置いていた右手を大和がこちらに伸ばすのがわかった。でもその手が触れるより先に、瑛二は逞しい両肩を掴んでベッドにその身体を押し倒していた。
瑛二が三人くらい束になって乗っかっても、びくともしなさそうな身体。胸板に左手を添えて、右手で頬に触れた。
音のするキスを降らせる。されるがままに瑛二を受け入れる唇。投げ出した足を絡ませようとすると、大和の手がそれを大きく開かせた。
「わっ」
いとも簡単に身体が持ち上げられる。担がれたと思えば、ベッドに座った大和の膝の上に瑛二はいた。
仕返しみたいに大和がキスを仕掛けてくる。舌に唇をこじ開けられ、歯をなぞられて肩が震えた。
「――ん、ん……」
粘着質な音が鳴る。唇と唇が触れているだけなのに嬉しくて、心臓がどくどくうるさい。身体を繋げているときのような頭の奥の痺れに、脳が甘く焦げそうだ。
長い指が瑛二のTシャツの中に侵入してきた。薄い布をたくしあげられ、思わず声が出る。
「待って」
「なんだ」
「もうちょっとだけ、このまま」
瑛二からキスをする。時に獣みたいな男は、従順に言うことを聞いてくちづけを返した。突っ走りがちなのに瑛二の言うことはちゃんと聞く。そういうところが可愛いと思う。
「……っは、う……」
キスの応酬が長く続くと息が苦しい。唇を離して魚みたいにぱくぱくと口を開けると、またすぐに大和に捕まってしまう。
「瑛二、わりい」
まだ唇が触れ合っていてもおかしくない距離で大和が言った。
「もうむりだ」
がっとシャツを持ち上げられ、胸より上の位置で乱暴に大和の口が布を咥える。両手が瑛二の肌をまさぐり、硬い指の腹が胸の先端を撫でた。
「あ、まって……脱ぐ、から」
Tシャツからするりと腕を抜いてラグの上に落とす。役割を失った大和の唇は瑛二の胸の先端にやわらかく歯を立てた。もう片方は指先で転がされ、じわりと身体が熱を帯びていく。
「あ……ぁ、んっ」
足の先までびくびく震える。こんなところに触れられるのは大和が初めてで、瑛二はこうされるのが好きだった。胸元に吸い付く大和の頭をかき抱いて、金の髪に顔を埋める。
きもちいい。
きもちいい。
もっと奥まで触れてほしい。
「や、まと……」
ぎゅっと抱きしめる。触れ合いながら熱を持った瑛二の下半身に、大和が気付かないわけがない。
「はやく……しよう?」
「なにを」
「はやくして」
「…………おまえ、自分で慣らしてきたのか?」
「そう、した方がよかった……?」
顔を下から覗き込むオレンジの瞳と見つめ合う。大和は意地悪く笑ってみせると、まだ少し濡れている瑛二の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「ばか、瑛二がする必要ねぇよ」
ちゅ、と音をたてて唇がまた胸元に吸い付く。けれどそこをしつこく攻め立てることはせず、それは喉元までゆっくりと上がって来た。
全身への、唇での愛撫。
新しいものに作り変えられるような感覚に、明らかな興奮が兆し始める。
「なあ、自分でいじったことねえの?」
「な、ないよ! そんなの……」
「ひとりでする時もか?」
「ないってば!」
どんな下世話な妄想をしてくれているのか。真剣に聞くものだから、怒るに怒れない。
「……おまえ、ひとりでするとき、おれのことかんがえてるのか?」
首筋に、大和は強く吸い付いた。
鏡を見なくてもわかる。きっとそこには赤い花がくっきりと咲いただろう。痕になるのはだめだと何度も言ったのに。
「大和、そこ、痕つけちゃだめ……」
「わるい」
「悪いって思ってないでしょ」
「……見せつけてやりゃいいんだよ」
いたずらっぽく笑った大和は、胸元にも深く吸い付いた。瑛二の露出仕事がほとんどないのをいいことに、そこにはいくつか同じ痕が残っている。
「……大和は、俺のこと考えてするの?」
「他に誰のことかんがえんだよ」
指先が例の首筋に触れる。
だめだって言わなきゃいけないのに。俺は大和のものだという印ができたみたいで言えなかった。
「ね……早くしよ、大和」
「明日昼からなんだろ。せかせかやる必要ねえよ」
「今からずっと、何回もやればいいんだよ」
「無理すんだろ」
「しないよ」
大和につけられた痕のあたりに触れて、その指先に唇で触れる。愛おしい。本当はできるならもっと、もっと、もっとしてほしい。大和のものだという証が身体のすみずみにまでほしい。
本当は性欲の処理だってひとりでなんてしたくない。いつだって大和としたい。毎日触ってほしい。本当は毎晩抱き合って眠りたいくらい、どうしようもなく大好きなのに。
震える唇を、大和の唇が覆った。やさしいキスじゃ物足りなくて、強く吸ってみると下手くそで二人で小さく笑う。
「瑛二、もっと言えよ」
「……なにを?」
「わがまま。おれにはもっと言っていい」
こたえられるか知らねぇけど、と大和が言葉の語尾を弱める。
言わせるなら応えてほしい。でも、聞いてくれるだけで瑛二は嬉しいのだ。
「大和にしか……わがままなんて言わないよ」
「おう、そうだな」
「じゃあ……手、離して。寝転がって」
不思議そうな顔をしながら、大和がそれに従う。鍛えられた身体はゆるやかに仰向けになった。
「じっとしててね」
「ん」
開かれた両足の間に膝をついて、服の上から大和の象徴に触れる。指先でそっと掠めてから、唇で。布の上からでも伝わる熱っぽさ。もっとちゃんと形を確かめるために舌を使う。その昂ぶりがくっきりと分かるようになるのに時間はかからなかった。
「服、脱がせていい?」
「……ああ」
ほぼ硬直しきっていた大和がぽつりと答える。
下着ごとジャージを脱がせてまたそこに顔を埋めた。瑛二の拙い行為に反応して、頭をもたげている。同じ男だからわかる。大和もこれをいいと思ってくれているのだと。
先端に唇で触れ、唾液を絡ませた。ちゅ、ちゅ、とキスをしたにあと深く咥内に咥え込む。
「瑛二、おまえほんとさ」
「ん?」
「……なんでもねぇ」
大和が軽々と上体を起こし、着ていたTシャツを脱ぎ捨てる。
瑛二の行為に感じているのだとわかる。熱い。すごく熱い。うわ言みたいに好きだと呟けば、口の中で質量を増して大和の身体はそれに反応した。セックスを模して出したり入れたりを繰り返す。労わるように頭を撫でられ気分が良くなった。
「瑛二」
「ん……?」
「このまま、出してもいいのか?」
硬い指先は耳たぶを撫でる。小さく頷いてさらに深くしゃぶってみせた。
「もっと……浅くするとき力いれてくれ」
鈍感な大和にも肯定しているのが伝わったらしい。よしよしと頭を撫でられるともっと頑張ってあげようと思う。こんなことをするのは初めてだけれど、これがどんなに気持ちいいことか、瑛二にもわかる。
「歯、つかってもいい」
「……ん」
痛くされるのが好きなのか、弱々しく歯を立てると大和のそれがびくびくと脈打つ。もうすぐだというのは瑛二にも感じ取れた。
「えい、じ……っ」
上り詰めたそれはわかりやすくはじけた。
咥内に白濁が注がれる。飲み込むことに抵抗はなかったけれど、想像以上の多さに口を離すとびゅっと頬に飛び散った。
「いっぱい出たね」
「んなせりふ、どこで覚えてくんだよ」
「……好きだよ」
「今、んなこと言うな」
大和の親指が頬をぬぐう。
だって本当のことだ。好きで、好きでどうしようもなくて。先にいってしまった大和をちょっとだけ恨めしく、ひどいと思うけれど、瑛二は大和と繋がってから一番気持ち良くなりたい。だから早く、もっと奥に、心の中に、入ってきてほしい。
「瑛二」
優しい声に呼ばれて期待した。
きっと抱きしめてもらえる、と思ったらそのまま組み敷かれ、天井と大和の顔しか見えなくなった。親指が瑛二のスウェットの腰元に引っ掛けられる。
「あっ……」
「びびってんのか」
「緊張しちゃった」
ずっとほしかったものが手に入る。昨日だって一昨日だって、もちろんその前だって、こうしてほしかった。
大和の首に両手をまわす。全てを任せる。そう言葉にする代わりに。ずるりと脱がされて、服はベッドの下へ落ちていく。
片足を持ち上げられ、そのまま肩に乗せられた。瑛二の両手はずっと大和の首に絡めたままだ。先走りで濡れているそこをじろじろ見られても恥ずかしくはない。こんなになるまで放っておいたのは大和なんだから。
「……ぁっ、」
つぷりと埋まる指の感触に、体が過敏に反応した。
「ほんとうに自分じゃさわってねぇんだな」
指を押し進めながら大和が言う。なんのことかわからず、久しぶりの異物感に思わず眉をひそめると大和が続けた。
「こんなにせまかったか?」
「それ、は……大和が、してくれない、から……っ」
「おれのせいかよ」
首を縦に振って肯定する。大和は構わず指を増やした。
「でも、今やってんだろ」
「ん……あ、ぁ……っ」
「おまえ、これすきだな」
「大和が、すき、なんだって……っ」
「……そうだな」
久しぶりなのに、大和は瑛二の好きなところをちゃんと覚えている。指の腹でぐっと擦られるとたまらない。シーツを泳いでいた足で弱々しく空を蹴る。
「ぁ、……や……っ」
はしたないからあまり声にはしたくない。でも手を離したくもない。唇をぎゅっと噛む。男のひどく感じるところをめちゃくちゃに触られて身体が跳ねた。
「やっぱ、ここなんだな」
「あ、やだ、やだ……そこ、いやだ……」
「すげえいい、ってことか?」
「いいけど、やだ……っ」
「すっげぇ……そんなにいいのか?」
指の動きは緩やかになったのに、すぐにでも達してしまいそうなのを堪えるのでやっとだ。いくのは大和と繋がってからがいい。ばらばらのままそうなりたくない。
「……はやく」
ほしい。
ほしい。今すぐほしい。
「それ、じゃないよ」
どうしようもないわがまま。でも、今日は、大和にだけは言ってもいい。
鈍い大和にもちゃんと伝わったらしい。埋められた指が抜ける瞬間にも声が出た。でも、まだだ。
熱を持って張り詰めた大和の性器が触れる。指で広がった中に押し入ってきて、ゆっくり二人はひとつになる。
「あ、ぁっ、は……」
「……瑛二」
「やま、と……」
最後までつながると、二人は息を整えた。その大きさと存在に慣れて、身体がまた『大和のものである自分』に作り変えられていく。
「うごいて、いいか……?」
「ん……して」
こくりと頷く。
ぴったりはまった大和が出て行って、また深く打ち付けられる。緩慢な抽挿が繰り返され、身体が揺れた。
好きだ。こうされることが。欲しいのは自分だけじゃないとわかるから。わがままになってしまうのは大和も一緒だと感じるから。
「な、つよくして、いいか……?」
おそるおそる、という感じで大和が聞いてくる。
もう何をされたっていい。首を縦に振った。
「っあ、ん……!」
「瑛二……」
「や、あ、ぁ、あっ」
大和と一緒にいきたい。最後のわがままは声にならなかった。
その後、結局自分がどうなってしまったのかわからなかった。けれどきっとものすごく感じていて、きっとすごく気持ちが良かった。
「……はぁ」
それはもう、『うっとり』という言葉がぴったりな感嘆の溜息。大きな腕に頬を寄せ、ぬくもりを確かめる。大丈夫かと問う声に大きく頷いた。
すごく、良かった。ただひとつを除いては。
「大和」
「ん」
「もう一回、しよっか」
身体を繋げてから、大和が達していないのだ。
自分だけ気持ちいいなんて、そんな自慰みたいなセックスは寂しい。右手の人差し指を立てる。大和も一度だけでなんて物足りる訳がなく、瑛二の頭を撫でて身体を起こそうとした。
「……だめ」
ぐい、と両手で大和の二の腕を引っ張った。瑛二の力では敵うはずがない。オレンジ色の瞳は揃って穏やかにまばたきをした。
「俺がやる」
大和の胸のあたりに手のひらを置く。シーツに沈む身体を跨いだ。無理すんなと優しく言われるとかえって無茶をしたくなる。反り返った性器の根元を支えてその場所へと導いた。
「――ッあ……」
正しい場所に触れると飲み込ませるのは難しくない。
自分のものとは比べ物にならない、身体の大きさに比例した大和の性器をしっかりと咥える。たくさん慣らしてもらっても感じる違和感はほとんど同じだから少しで良かった。
「瑛二……」
「気持ち、よくない?」
「奥までいけるか……?」
「……ん、あんまり大きくしちゃだめだよ」
「わかってる」
「わかってない……」
思わず呆れるような口調になった。
どくどくと血を巡らせる熱が、大和の意に反してか瑛二の中で大きくなる。もういい、関係ない。その大きさを身体に確かめさせるみたいに少しずつ腰を落とす。
大和が喜んでくれているのだと思うと嬉しい。全部飲み込んでしまう前に感じる部分に擦りつけて腰を上下させると、大和がまた存在を大きくさせてくる。
「や、まと……もう、」
「おまえかわいすぎんだよ」
主導権を握っているのは間違いなく大和だった。両手に腰を抱かれ、奥まで当たるようにぐっと落とされる。
「瑛二の好きなとこだ」
「……ん、すき」
「だろ。もっとされたくねぇの?」
「ほしい……、ほしいよ」
ゆっくりと腰を上下に動かす。硬い大和の熱で好きなところを擦って、これじゃまた瑛二の自慰みたいだ。
「大和……どうしたらいい?」
「おまえのしたいようにしろよ」
「俺がしたいのは、大和のきもちいいこと……」
「……そうか」
何の前触れもなく大和の上体が起き上がる。跨っていたはずの身体が抱え上げられるかたちになって、結合がより深くなった。
広い背に手をまわしてくちづけをねだる。重ね合った唇を食むように求めると大和はそれにもすぐに応えてくれた。息が苦しくなるまで貪り合って、少し離れると銀の糸を引いてぷつりと切れる。
「……瑛二、ありがとな」
「え?」
「フェラされたのも、おまえから乗っかってきたのも、すげえ興奮した……でもおまえ苦手だろ、そういうの」
「そ、そんなこと……ない、よ」
「なんだ? じゃあこういうの好きなのか?」
「す、すきだよ! 大和が、相手なら、だけど……」
「は、かわいいこと言うじゃねぇか」
軽くくちづけられて、そのまま押し倒される。繋がる角度はゆっくりと変わって、痛みも違和感もなかった。
「おれの好きにしていいか」
柔らかいシーツに背中を包まれ、正常位に戻される。返事をする間もなく、やわく欲望を打ち付けられてまたすぐ達してしまいそうだ。奥を突かれながらも腕を掴み、懇願する。
「大和、いっしょにいきたい……」
「いっしょに?」
「俺の中……出して、いいから」
「瑛二、おまえほんと……おれ以外にそういうことぜったいに言うなよ」
「っ、言わな、いって……っあ、やっ、ん……!」
「おれがいくまでがまんしろよ」
「ひゃ、ぁん、あ、なに、やっ」
全部が性感帯になってしまった内側を、太いものでずくずく刺激される。その度唇から喘ぎ声がこぼれてしまう。すごくよくて、愛おしくて、達したいけれどずっと感じていたくて、じんわり熱い涙が目じりにたまった。
「っは――ぁ、あッ、あ、ぁ……!」
「好きだ。すきだ、瑛二」
喘がされながら、甘い言葉に耳まで溶かされる。ふと目を開ければ細くなった瞳に見下ろされていることに気付いてますます熱くなる。ほぼ二つ折りにされた身体の、隅から隅まで大和に見つめられている。
(また、おっきくなった……大和の……)
瑛二の深くに埋まる熱が、わかりやすく質量を増す。もうここまで来ると何をされても絶頂が近いほど気持ちが良くて、思わず両足をがっしりとした腰に絡めた。
「やまと、俺もう、いきそう……」
「ん……いいぜ」
「だから、大和も……」
何をすればいいかわからないけれど、どうされるのが気持ちいいのか、瑛二にもわかる。きゅうっと締め付けをきつくすれば、大和の唇からも小さく声が漏れた。
「きもちい?」
「っあ、ばか……あんま、きつくすんな……」
「俺の中に、出していいから」
「おまえ、ほんと……ッ」
「っあ、ぁ、や――!」
ひときわ奥に突き立てられて、たっぷりと熱が注がれるのがわかった。繋がった場所以外どこにも触れられていないのに、瑛二の欲望も同時に弾ける。
「ぁん、ん、あつ、い……!」
「すげぇ……めちゃくちゃ気持ちいい……」
「俺、も……」
しっかりと抱きすくめられ、反射のように瑛二も腕の力を強くする。
まだまだたくさん大和が欲しくて、できるものならいっぱい与えたくて、そして明日はゆっくり寝ていられるはずで。このまま抱き合っていたいのに、意識が遠くなっていく。
「やま……と、」
「となりにいてやるよ」
「やだ……そう、じゃなくて……」
ふ、と微かな笑い声。
目が覚めるほど激しくしてくれたらいいのに、大和がそんなことをするわけもない。煌々と灯りがついたままの部屋で、瑛二は静かに意識を手放した。
朝は淡い光が連れて来た。
窓から漏れる一筋の明かりが眩しくて目をこする。ぼやけていた人影が、ゆらりと近付いた。
「起きたか」
「……大和?」
「寝惚けてんのか? 珍しいな」
大きな手が伸びてきて、頭をくしゃくしゃ撫でられる。
ベッドに腰を下ろした大和は、いつものトレーニングウェアを着ていて、うっすらと汗を滲ませていた。
「走ってきたの?」
「おう」
「となりにいるって言ったのに」
「ぐうすか寝てたのは誰だ」
「……俺だけど」
わざと小さく唇を尖らせると、不意打ちでキスを食らう。
腰を抱き寄せられ、悪かったと耳元に囁かれることに瑛二は弱い。胸元にぴたりと頬を寄せれば、困ったように大和が肩を押した。
「わり、汗かいてんだろ」
「いいよ、そんなの」
「シャワー浴びてくっから」
「じゃあ俺も行く」
「なんでだよ」
「ただのわがままだけど、だめ?」
「う……だめなんて言ってねぇだろ!」
ひょいっと身体が担ぎ上げられる。物みたいに持ち上げられて、足をばたつかせても下ろしてくれない。
「大和!」
「なんだよ」
「このまま行くの?」
「どうせ皆飯食ってるし平気だろ」
「じゃあ俺も先に朝ご飯にする」
「おまえはおれと風呂」
「……もう」
「行くぞ」
はぁい、と少し間の抜けた返事をする。わがままが許される二人だけの時間は、あともう少しだけ続きそうだ。
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