Please xxx

 思えば、あいつの様子がおかしかったのは朝からではなく、その前の夜からだった。

 大浴場で手短に風呂を済ませ、部屋に戻る途中で鉢合わせた。スマホでメールを確認していたらしい瑛二は大和と視線を合わせると、あ、と小さく口を開いて目線をそらし、また戻す。その不自然さを、すぐにおかしいとは思わなかった。

「大和、明日も収録の前、別の仕事なんだっけ?」

 瑛二の言う収録とは、瑛一と瑛二が二人でパーソナリティを務めているラジオのことだ。前回ゲストに呼ばれた時と同じく、明日も朝から撮影の後に向かうことになっていた。あぁ、と短く返事をすると、「明日はよろしくね」とぎこちなく微笑む。

「なぁ」

 部屋に戻ろうとドアノブを掴んだ瑛二の手に、自分の手を重ねる。大和を見上げたすみれ色の瞳はなにかに怯えているようにも見えた。

「……なんかあったか?」
「え、ううん! 全然!」
「ほんとか? 飯ちゃんと食ったか?」
「うん、いっぱい食べたよ」
「ならいいけどよ」

 重ねた手を解く。代わりに、頭を軽く撫でると瑛二はくすぐったそうに目を細めて笑った。

「な、部屋こねぇか?」
「え……」

 言葉に含まれた意味をもちろん理解した瑛二は白い頬をふわりと赤く染める。早朝ロケなんかが入っていない限り、誘いを断られたことはなかった。勝率百パーセントの、恋人同士の誘い。互いに体力はそれなりに有り余っているし、純粋無垢な顔をしておいて、瑛二がそれを強く望んでいることを大和は知っている。
 けれど瑛二は一瞬華やがせた顔をしゅんと曇らせ、「ごめんなさい」とまた目線を泳がせた。

「明日の、ラジオの台本の確認、終わってないから……あの、すっごく行きたいけど……」
「いい。無理すんな」
「ごめんね大和、ほんとに」
「気にしてねぇよ。じゃあな」
「うん、おやすみなさい」

 がっかりしていない、といえば嘘になる。期待した。めちゃくちゃ期待してしまった。当たり前に瑛二は大和の部屋に来て、ベッドに腰掛けてしばらくどうでもいい会話をして、笑って、それから、抱き合えると思った。明日の仕事の準備が終わっていないなんて瑛二らしくない。もちろんそれを恨んでもどうしようもないけれど。
 部屋に戻る道中、窓際のソファで台本に目を通していた瑛一に出くわした。足を止め、明日はよろしくと互いに挨拶を交わす。

「パーソナリティって大変らしいな。瑛一はもう明日の台本チェック終わったのか?」
「基本的に俺と瑛二のラジオは、台本をもらうのは当日だぞ」
「え――そうなのか」

 眼鏡の奥の落ち着き払った瞳を少し丸くして瑛一が口元をゆるめる。それって瑛二もおなじだよな、と問うと不思議そうな顔をして頷いた。
 自室に戻りベッドに仰向けになると、天井が微妙に傾ぐような感覚に襲われ目をつむる。
 嘘をついて、断られた。
 瑛二に。
 腹立たしさや苛立ちはわいてこず、自然な疑問符が頭上を飛び交う。やっぱり体の調子が良くなかったのか? 他の、大和には言えない仕事が立て込んでいるのか? セックスしたくなかった? まさか誰かにばれたとか? でもどうしてそれを隠すのだろう。
 胃をすぐに荒らしてしまいそうなもやもや絡まった気持ちは体中を駆け抜けたあと、明日本人に訊くしかない、という選択肢に帰着した。どうかくだらない理由であれと念じながら目を閉じる。

 

 

 翌朝の瑛二は、誰が見ても分かるほど様子がおかしかった。
 口数が少ない。目線がきょろきょろと泳ぎがち。そして、わざとらしく(少なくとも大和にはそう見えた)ため息をついて、ナギにどうしたのと訊かれ、笑ってごまかす。
 朝一の仕事まで時間がなく、瑛二もなんだかんだバタバタしていたので話しかける余裕はなかった。顔色は悪くないし、朝食も残さず平らげている。だから過剰な心配はせず寮を出る。
 その数時間後に仕掛けられるドッキリのことなんて、もちろん考えもしなかった。

 

 


「兄さん、大和、ドッキリのこと、本当にごめんね」

 収録のあと、狭いブースで向かい合った瑛二にまた両手を合わせられた。隣に座っていた瑛一は一瞬きょとんとして、すぐに陽気に笑い始め、口元を綻ばせる。

「どうして謝るんだ、瑛二。番組が盛り上がったのだから、何も問題はない」

 零れ落ちそうなほどの笑みを残して、次の仕事があるからと颯爽と収録ブースを後にする。
 番組企画のドッキリを瑛二がここまで気にして謝るのは、きっと昨晩のことがあったからだろう。正直、残念だったしドッキリだとわかった時は拍子抜けした。そして同時に大した理由じゃなくて良かったと安堵してしまったのも本心で。蒸し返してぐちぐち言うのは性に合わないし、過ぎたことを振り返っても仕方ない。けれど、大和の誘いを理由なく断ったことがない瑛二にとっては、昨晩のことは気にかかってどうしようもなかったのかもしれない。

「気にすんな」

 となるべくやわらかい声で言った後、「仕事だろ」と続けると見るからに瑛二が落胆するのがわかった。でも間違いなく、これは仕事だ。二人がなにより優先すべきもの。
 次の仕事まで時間に余裕はあったが、瑛二より先にスタジオを出た。三月だというのに風がまだ冷たい。次の現場への二駅分を走ろうと決めた。二週間前、熱くなった瑛二と飛び出して、二人で走った道だった。

 

 


 帰寮した頃には雨が降っていた。天気予報を見ずに雨具を持たず出かけて濡れて帰る。そんな大和の行動パターンを読み切っている瑛一(多分)が帰りは事務所の車を呼んでくれていて、今日は雨に遭わずに済んだ。部屋で軽いトレーニングをこなしてからベッドに腰を下ろす。そういえば瑛二はもう帰っただろうか。今日は、きっと誘えば応じるのだろう。例え多少忙しくとも。ドッキリの罪悪感を拭えていなさそうな顔を思い出すと、なぜか大和の方が申し訳ない気持ちになってしまう。今晩瑛二を誘うのは、あいつの罪悪感を利用するような気がして。
 繊細そうに見えて案外図太いというか、雑なところがある。それなのに自分が相手をどういう気持ちにさせているのか、過剰に敏感なところもたまに垣間見える。そういう危ういところが、幼気でかわいいと思う。立ち上がろうとした瞬間部屋の扉が叩かれて、座ったまま返事した。

「おじゃまします」
「おう」
「大和、昨日はごめんね」

 風呂上がりらしく、パジャマ姿の瑛二がすぐ隣に腰掛ける。水分を含んでつやつやした瞳がまっすぐこちらを見上げてくる。眉は困ったようにハの字に下がっていた。
 唇を引き結んだまま、何も言わず瑛二の瞳を見つめ返す。瑛二の表情が、真剣だったのがだんだんおろおろと落ち着かない様子に変わる様が、よくできたアニメーションみたいだった。

「やっぱり怒ってる?」
「おこってねえよ」
「でも、怖い顔してる」
「こわかねぇだろ」
「怖いよ」

 と言いながら、少しむっとした顔になる。
 謝れば許してもらえる。そう思えるくらいがちょうどいい。どんな感情も引きずりたくない。思わず笑ってしまいそうになって細い身体を押し倒し、唇を重ねた。昨日もしたかったキス。
 何度か啄んだ後、唇を離すと目をぱちぱちと瞬かせる瑛二にもう一度触れるだけのキスをする。

「……びっくりした」
「おれだけドッキリされてたまるかよ」
「やっぱり怒ってた」
「おこってねぇ」
「怒ってもいいのに」

 本気で安心したのか、表情を崩して笑う瑛二の頬の高いところに唇を寄せる。パジャマのボタンを外さずに裾をたくし上げるといとも簡単に秘められた場所が空気にさらされる。黙って目を閉じる瑛二の余裕に少しだけ苛立って上唇を甘噛みした。

「おれだけ恥ずかしい話させられて、なんだよって思ったけど……瑛二の恥ずかしいとこも、おれに見せてくれんだろ」
「……うん」

 小さく頷く。床に伸ばしていた足をベッドに乗り上げて、瑛二の身体を膝の上に抱えた。紫の瞳が少しだけ高い位置から大和を見下ろす角度。瑛二は甘えたがりの両腕を大和の首に絡めて額と額を合わせる。

「俺にお仕置き、してほしいな……」
「そういう言いかたすんなよ」
「だって大和に嘘ついたでしょ。初めてだったし、本当に悪いことしちゃったって思ったんだ」
「……どういう風にされてぇんだよ」
「大和のしたいこと、なんでもされたい。恥ずかしいところも、全部見てほしい……これじゃ、俺のしたいことになっちゃうけど」
「じゃあそれでいいだろ」

 パジャマのボタンを上だけ外して、その下の肌着といっしょに脱がせる。ぷくりとかすかに尖った突起を短い爪で引っかいて、顔を見上げた。息か声かわからないものが唇から漏れて、感じているのがわかる。こんな、性器でもないところで。大和がそうするようにした。この身体を、作り替えてきた。それがわかるから、嬉しい。
 もう片方を唇で愛撫する。

「んっ……あ」

 抱き上げた身体が震える。拒絶じゃない。

「ぁ、ん……っ、すき、そこ好きっ……!」

 舌の先で舐め上げる。感じているのだとわかりやすく膨らんだ乳首を上から下へと。触れて離れてを繰り返すと、くっついた時にだけ「んん……」とこぼす甘い声が愛おしくて仕方がない。
 両脚が大和の腰に絡みつく。すごくいいと言われているみたいで、口に含んだ突起を甘噛みした。

「ぁ、ぁああっ……きもちい……」
「うれしそうな声だしやがって……」
「うれしいんだもん」

 腰を支えていた手を取って、指を絡めてくる。びしゃびしゃに濡れた左の乳首から口を離し、見上げると、赤い顔をして瑛二が微笑む。パジャマのズボンを膝まで下ろすとあとは瑛二が自分で脱いだ。下着のふちに親指をかける。触るまでもなく、瑛二の性器が反応して膨らんできているのがわかった。

「昨日も……ドッキリなんてやめて、大和の部屋に行きたいって思ってたよ」
「昨日瑛二と寝たら、さすがにおれも今日ひっかからなかったかもな。わかんねえけど」
「すごい、してほしかった……あ、ぁっ」

 下着を下ろす前に布の上から熱に触れる。熱くなって、かたちを変えて、興奮に蜜を垂らすそこはまるで別の生き物が息づいているようだった。華奢な身体とそれなりに存在感のある性器とがびくびく震えるのを、思わずかわいいと感じてしまう。黒いボクサーパンツにうすく染みが広がるのがわかった。

「んん……っ、あ……」
「えーじ、もうちょいつよくしてもいいか」
「ん、すき……強いの、すき、ぁ!」
「もういきてえのか?」
「うん……、いきたい……」

 大和の頭を掻き抱くかたちで埋められ、表情が見えなかった。下着の中に手を伸ばす。硬直したものをゆるく扱くだけで瑛二の焦燥はわかった。ぬるついた男の感覚さえ愛おしくなってしまう。

「ぁ、あぁっ!」

 手の中にたっぷり白濁を吐き出される。そのまま腹と腰を撫で、下着は瑛二が自ら脱いだ。
 寝間着をすっかり着込んだ自分の上に一糸纏わぬ瑛二を抱いているのが、悪いことをしているように思えて興奮する。腕のあたりの布を掴んだ瑛二が赤らんだ顔でくちづけを求めてきて、応えた。

「……ご褒美、になっちゃうね」
「ん?」
「嘘ついたお仕置きしてって言ったのに……」
「おまえってさ」

 林檎のような色をした頬に手のひらを押し当てる。思った以上に熱かった。

「なんつーか……案外、Mだよな」

 と言うと、また瑛二の体温が上がる。指摘しない方が良かったのか? 恋人をいじめたい性癖が大和の中にないから困ってしまう。ただ大切にしたいのだ。人より力が強くて、体が大きいから、余計に。
 瑛二は恥ずかしそうに小さく頷いて「そうかも」とひとりごとのように言った。

「……だからなにってわけじゃねえけど……。おれ、おまえのそういうとこ、満足させられそうにねえんだけど」
「ううん、いいんだ」
「でもなんかあんだろ、したいこととか……されたいこととか」
「大和がしてくれることが全部好きだから」
「おれだって、瑛二がどうしたいとか、どうされたいとか、たまにはききてえよ」

 できるかわかんねえけど、と付け加えると瑛二は首を横に振る。こんなにも誰かを喜ばせたいと、見返りを求めず考えることは初めてで、例えば、と考える。スウェットのトップスとその下に身に着けたタンクトップを脱いで、瑛二の両腕を掴んだ。スウェットの両袖をまとめるように結んで腕を拘束する。

「こーいうの、好きとか?」
「うん、多分」
「たぶんってなんだよ」
「初めてだから」
「なんかおれがやばいやつみたいじゃねーか……」

 膝に抱えた全裸の瑛二は間違いなく未成年で、そのために誂えたわけでもない布で両腕を縛ったりして。片手でベッドサイドの引き出しを探り、ローションを取り出す。キスを求めたのは瑛二だった。結ばれた両手を大和の首の後ろにまわし、指先が肌に触れる。
 くちづけながら脚を割り開かせ、後ろを探った。他に何か、と思ったけれど、わからない。どうやって喜ばせればいいのか。決して口にはしない期待に応えてやれるのか。おれはくだらないセックスばかりしてないだろうか。思わず考えてしまう。

「……あっ」

 指先を含ませると小さな声がこぼれる。
 そのままゆっくり潜り込ませていく。ぴったりと密着した身体が緊張で硬くなるのがわかった。目の前の肌にくちづけを施して、空いた手で腰を支えながら撫でた。

「んん……っ、う、ぁ……!」

 中を擦りながら体勢を入れ替える。ベッドに肘から下をつけて四つん這いになった瑛二に覆い被さると、顔だけで振り返った。唇を捉え、指を増やす。
 足を開かせ、三本、後孔に飲み込ませた頃にはもうローションでそこは濡れそぼっていた。ぬるぬる滑りの良くなったくちに早く挿れたい。スウェットと下着をずらして性器を取り出し、空いた方の手で扱くと興奮と期待を含まされたそこはすぐに質量を増して瑛二を求める。

「挿れていいか?」

 瑛二は振り向くとこくりと頷いた。

「聞かなくて、いいよ……っ」
「ん……わり」
「あっ、ぁ……っ!」
「はっ……すげ、からみついてくる」

 きゅうきゅうと締め付けられ、目の前が一瞬点滅した。気持ちいい、と大和が口に出す前に、泣きそうな声で瑛二が言う。ものが入るはずでない場所が悦んで性器を啜ってくれる。太い熱の塊が飲み込まれていくのを見下ろした。少し引き抜いて、深く穿つ。肌と肌がぶつかる音が生々しく耳を犯す。

「ひゃ、あ、うっ! やぁっ」
「でけー声だすときこえんぞ……」
「や、ぁあ……っ」

 声を殺そうと目の前のシーツを噛んで、衝撃で離してを繰り返す。結局とぎれとぎれの嬌声はシーツに押し付けた唇から獣の鳴き声みたいに漏れ出した。

「えーじ、おれの手かんでろよ」

 身体を倒して左手の指先を口元に押し当てる。唇と歯を割って第一関節までを咥えさせると「んん……」と鼻にかかった声が聴こえた。拒否されているのか、喘ぎ声の名残なのかわからない。深くなった挿入の刺激で、瑛二が人差し指に歯を立てた。

「ん――ッ……」
「犬みてえ」
「っ、ん、ごめんなさ……ゃああっ」
「口あけんなって」

 ずく、と腰を突き入れるのといっしょに咥内で指を動かした。規則的なテンポで律動する。大和の指を咥えながら、それでも声はわずかに漏れていて、なんだか生々しい。無理やり犯しているような気がして。

「ぁ――、ぁ、あ……っ…………」
「なんか、興奮してきちまった……かわいいな、おまえ」
「ゃ、ん……!」

 手を前に回せば先走りにまみれた性器が反り返っている。優しく握り込んで、それから激しく高めれば指をしゃぶった唇は強く強く吸引してくる。やや尖った歯が食い込む。痛いのと同じくらい、愛おしかった。

「えーじ、もっとしていいか?」

 耳元で囁くと、こくこく頷いて返事をする。動物の交尾みたいに後ろから抱き込んだまま抽挿のスピードを上げると咥え込ませていた指が口からするりと抜けた。その手で腰を掴み支える。

「あ! ぁ、ぁあっ! やまと、ぁんんっ」
「わり、よゆうねぇ」

 誰も部屋の前を通りませんように聴こえてないふりをしてくれますように。願うことはできても動きが止められない。くっついて、つながって、いちばん好きなことを瑛二としたい。

「ぁあ、あ! やっ! やまと、奥……!」
「おう、すきなとこだろ」
「ぁああ、あ、やだ!」
「やじゃねーよ」

 こんなにびっくりするくらい、すっぽりと吸い付いてくれるのに。腰を擦りつけて、いちばん奥の瑛二が感じるところをぐりぐりと刺激する。指よりもっと太いもので繊細な動きはできなくても、瑛二の発する声でそれがどれがけ良いことか、よくわかった。

「あ――、だめ、ぁあ!」
「それってやめてほしいってことか?」
「ちが、ちがうの、ぁっ、んぁああ、やっ! いっちゃう、いきたいぃ……っ」
「もーちょいがまんな」

 かわいい。片手で握り込んだ性器を指でたっぷり甘やかして、けれどすぐにはいかせてやらない。いじめているわけじゃないのに、甘ったるい喘ぎに涙声が混じり始めるのに時間はかからなかった。

「泣くなって」

 すげえかわいいけど。まぁそそるけど。シーツに顔を埋めて啼く瑛二を振り返らせると、呼吸が止まるかと思った。紫の瞳のふちを赤く染めて、睫毛と頬を透明の滴に濡らして。健やかな瑛二の姿をこんな風にできるのはおれだけ――おれとのセックスで、だけ。触れると火傷しそうなほど赤らんだ肌にはっきりと欲情した。
 涙よりも唾液に濡れた唇が強かに「いかせて」と懇願する。

「……めざめちまうだろ、ばか」

 ひたひたに濡れた唇に噛み付いてとどめのように腰を揺さぶる。性器の裏側を指先で撫で上げ、解放するとどろどろと精があふれだす。喘ぎ声とくちづけと呼吸とが入り乱れてもうこの行為がなんなのかわからない。少なくとも「お仕置き」はおれには向いてねえな、と思いながら大和も繋がった奥へと欲をとっぷり注ぎ込む。

「ぁ、ぁあっ……!」
「おわりじゃねえからな。このままもっかいやんぞ」
「うん……っ」
「うれしそうな顔しやがって」

 涙をめいっぱい浮かべた顔で笑うから、どうにかなりそうで何度も何度もくちづけを繰り返す。

 

 

 

 

 

 脱ぎ捨てた衣服をすっかり身に着け直すと、巻き戻して事に及ぶ前に戻れるような気がした。全身の微妙な疲労感とすっきりした下半身がもう終わってしまったのだと示すように睡眠を求める。だからその欲望に従ってシーツを被り直した。枕の位置を少しずらすと隣ですっかり眠っていたはずの瑛二が振り返る。

「めざめちゃった……?」
「ん? 起きたのはおまえだろ」

 ねぼけてるのか、と頭を撫でる。しかし瑛二はかぶりを振って「大和」としっかり名前を呼ぶ。

「めざめるって、言ってた」
「……あぁ」

 言ったかもしれない。
 嗜虐的な思考、というか。
 瑛二の泣き顔に興奮したというか。

「まぁそりゃ……べつにそういうのもきらいじゃねえけど」
「けど?」
「ひどいことはしたくねえ」
「大和は優しいからなぁ」

 ふふ、と笑い瑛二も大和の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「今日も、俺にプロテインバーくれたもんね」

 抱きつく――というよりは、胸にダイブしてくる。細い身体を受け止め、抱きしめた。
 そういうところが好き、と額をこすりつけてくる。

「おれだってすきだ」

 慈しむように細い髪を梳く。もうそんなのわかってるよと笑ってほしい。それでも何回でも言わせてほしい。聞かせてほしい。誰よりも大好きだと。