夏の超短いやまえじ

 咲きかけの立葵の向こうに背の低い影が揺れていた。
 瑛二、と声をかけると顔を上げる。つばの広い帽子に腕をぴったり覆い隠すアームカバー、首にぐるぐる巻きつけたタオルで武装し、日焼け対策は万端だ。じょうろに残った水をまき終わると首筋の汗を拭った。


「おはよう。走ってきたの?」
「おう。すげぇかっこだな」
「俺焼けやすいんだ。大和は平気なの?」

 タンクトップ姿の大和を見上げ首を傾げる。

「ああ。日焼け止めはぬれって瑛一に言われてるけどな」
「俺も。移動のときは日傘も差すようにって」

 花壇のそばに立てかけた長傘を指さし困ったように笑う。さしてやろうかと言うと瑛二はかぶりを振った。太陽を背にした大和の影に入り、タンクトップの裾を握って見上げる。

「大和が日除けになるから大丈夫」
「そしたらおれが焼けんじゃねぇか」
「じゃあ離れた方がいい?」

 後ずさろうとした身体を抱き寄せる。
 体温が、互いの汗の感触が、直接伝わる。瑛二が露出した大和の両肩を撫でて「確かにここが焼けちゃうかも」と呟いた。でも互いに腕を解かない。

「暑いのにくっつきたいなんて不思議だね」

 夏の庭は静かだ。高すぎる気温のせいで蝉も鳴きやしない。だから瑛二の密やかな呼吸音がよく聴こえた。

「大和は暑くないの?」
「……すげぇ暑い」

 でも不思議だ。離れたくない。