「行ってくる。戸締りよろしくな」
大和の家の洗面所で歯を磨いていると、家主が鏡を覗き込んで声をかけてきた。無造作に跳ねさせている髪を少しいじって、瑛二の頭をひと撫でしてから靴を履き、扉が閉まる。
この家、ここにしか鏡がないんだ――と思ったのは今日が初めてではない。それに気付くタイミングはたくさんあった。二人で揃って家を出る前、一緒に鏡を覗き込むとき。今日みたいにどちらかが洗面台に立っていて、もう一人が出かける前の身だしなみチェックをするとき、などなど。
靴箱の上に残された瑛二の合鍵を見つめ、自分にもここに家具を増やす権利があるんだろうな、と思う。いくつも買うわけじゃないし、あって困るものではない。先月やってきたばかりの広いソファに腰を下ろし、スマホでamazonを開けば購入まではほんの数秒だった。
――鏡を買った日
「お、なんか増えてんじゃねぇか」
翌日、帰宅するなりリビングにそびえる、案外存在感のある「それ」を大和は興味深そうに眺めた。二人で同時に使うこともあるだろうし、何より大和は体が大きいので幅広で背が高いものを選んだ。それでも大和よりは低いけれど、角度をつければ十分そうだ。
新しく与えられたおもちゃのようにひとしきり眺めた後、大和は風呂に向かった。瑛二はもうドライヤーまで済ませていたので、ごろりとベッドに寝転がる。寝室のほとんどを占めているベッドは、瑛二がこうして出入りするようになった前から使っているものらしい。寝室からつながっているリビングに鏡が見えて、やっぱり買ってよかった、と頷く。瑛二が選んで買ったものが大和の部屋にあることが嬉しい。
頬をこすりつけると好きな匂いのするシーツの上で、好きなひとの部屋で、やわらかい安心に抱かれているとついうとうとしてしまう。明日は二人揃って午後からロケだから、ゆっくりしていられる夜なのに。鏡の中を見つめるとリビングのソファが映っていて、ロケの進行表を置きっぱなしにしていたことに気付く。かばんに入れておかなきゃ。そうは思うも睡魔に勝てず、まぶたは一瞬で瑛二の世界にふたをした。
今何時だろう。
目が覚めるとまだ部屋は明るくて、体にかけられたシーツが光を遮っていた。大和の部屋には時計もないから(これには正直不便していない)、スマホを探そうとするも、それもソファに置きっぱなしだったのを思い出して断念する。
隣に大和はいないけれど、シーツをかけてくれたということはもう風呂からあがっているはずだ。ふいに目線を上げて鏡を見つめると、ソファに座る大和の姿が映っていた。こうして鏡越しに見つめるのはちょっと新鮮で面白い。何よりその光景から目がそらせなくなってしまったのは、右手でスマホを持って、左手を寝間着のウエストに突っ込み――大和が自慰に耽っていたからだ。
(わ……)
見てはいけないものみたいで、でも、見つめていいのは自分だけな気もして。大和はこうやってするんだ、と思わず見入ってしまう。片足をソファに上げ、だらりと差もたれに上半身を預けて、目線はスマホの画面に注がれている。大和と、それなりにやることはやっているからわかる。細められた瞳のオレンジが、興奮に揺れているのが。
何見てるんだろう。たとえ大和が好んで見て(使って?)いるものだとしても、女の子のそういう動画には全く興味がわかない。他の男もいらない。大和がいて、触ってくれるのが瑛二はいい。
(きもちよさそう……)
一人でしている大和の顔をもっと見たい。でも、こうやって消費されるために撮られた女の子の動画に夢中になっている姿は見ていたくない。二つの気持ちは逆を向いているのに、大和の姿をとらえる瞳がそらせなかった。
手つきが速くなると、ソファに乗り上げた膝に体がほとんど隠れてしまった。けれどスマホをじっと見つめる顔と、荒い息遣いだけで大和がどうしたいのかわかる。いきたいんだ、と。
きゅっと結ばれていた唇がほどけて、えいじ、と自分の名前のかたちに動いた気がした。
「……おい、瑛二」
思ったよりはっきりした声で、うわ言じゃなく、大和に呼ばれているんだと気が付いた。
「いつまで見てんだよ」
「え!? いつから気付いてたの……?」
「だいぶ前。こっち来いよ」
瑛二がもぞもぞとシーツから這い出る間に大和はティッシュで左手を拭った。隣に腰を下ろし、頭を肩に乗せて密着させる。
「今日はもう起きねぇかとおもった」
「そうだ、今何時?」
「んー……」
大和も把握していなかったらしく、スマホの画面で時間を確認する。人のスマホをのぞき見するのは良くないと思いながら、好奇心に勝てず画面に視線をやった。小さな液晶の中の動画に見覚えがある。
「え、これ……何でとってるの? 消さなかったの?」
「こっちのスマホ持って出かけねぇし」
「そうかもしれないけど……」
時刻表示がちらっと見えたけどもうどうでも良くなってしまった。そういえば、大和、この動画で千回抜けるとか言ってたっけ。いつだったか、瑛二が撮ってしまったハメ撮り動画をオカズにされていたのは、恥ずかしいけれど嫌な気持ちは全くない。
大和の方へ寄せた頭を撫でられ、またまどろみかける。でも、眠るために大和に呼ばれたんじゃない。一人で触って、いく前に呼んでくれた。一人より二人がいいのは大和も同じだった、きっと。寝間着の上から膨張した部分をそっと指で甘やかす。いきたくて仕方ないくせに、なぜか大和に手首を握られた。
「なぁ、場所、ここがいいか……?」
「大和の好きなとこでいいよ。ベッド、行く?」
じゃあ――と大和が発した言葉の続きはなく、体がひょいと持ち上げられる。一度寝室に入ってクッションを掴み、鏡の前に落とすとその上に大和が腰を下ろした。大和が鏡の方を向いて、抱き合っている瑛二は背を向ける格好になる。膝の上に座って昂ぶりを押し当てられ、背後は鏡という緊張感。ここでするために鏡を買ったわけじゃないけれど、振り返り、大和にしがみついた自分の姿を見るとしびれるような性感が突き上がってくる。
「瑛二、反対むけよ」
「……恥ずかしいよ」
「おれしか見てねぇだろ」
それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのだが、わかった、と体を半回転させる。鏡に向かって、大和がクッションの上にどっかり座って、その上に瑛二が同じ向きで乗っかるかたちになった。
「えーじ、上からか……下から、どっちがいい?」
Tシャツをゆっくりたくし上げられ、問いかけの意味を理解した。大きな手のひらはどちらからとでも言うように瑛二の腰を撫でてみせる。
「う、上……」
「わかった」
いつも大体上からだから。
大和の指の腹で胸の先端を突かれる。それだけで感じてしまって本当にどうしようもないけれど、気持ちいいことには抗えない。さっきまで何でもない場所だったはずのそこは、大和に優しく触れられるだけで性器みたく変わってしまう。人差し指で捏ねられていたところに親指を添えられるまで、時間はかからなかった。つままれ、軽く引っ張られていじめられる。これが好きだ。
「あ――、あ、ん……」
上体を軽くひねり、大和の肩口に頬を押し付け目をつむる。触れられている場所と、これから触れてもらえる場所と、からだの全てが気持ちよくて、大和の首筋に唇が軽く触れるだけで肌が粟立った。
「えーじ、鏡、見ろよ」
耳元で低く囁かれる。舌を耳に差し込まれ、肩を揺らしながら顔をあげた。
「すげーエロい」
確かに普通じゃない光景だった。胸元にたくし上げられているゆるいTシャツのおかげで弄られている部分は見えないけれど、その上の、真っ赤に熟れた表情が全てを物語っている。鏡の中の自分が羨ましい。そんな風に触ってもらえて。
鏡を見ろと言った大和の方は時々確認するように視線をやるくらいで、ほとんど自分が触れている場所に集中している。そのおかげで気持ち良くなれているけれど、なんだかさみしい。
「大和も、鏡見て」
「ん?」
「大和の顔と、触られてるとこ、どっちも見たい」
自らTシャツを脱いで肌を露わにする。かがみ、ともう一度促すと反転した世界の大和と目が合った。
さっきまで触れられていたのとは逆の方に手を伸ばし、ぎゅっと指先でこすられる。空いた方の乳首がかわいそうな気がして、自分の指でそっと押してみた。
「そっち、まっかだな……。いたくねぇ?」
「ん、へいき……っん!」
上半身を少し横に倒されて、先端を口に含まれる。優しく吸いながら鏡の奥を見つめるオレンジの瞳にからだ全てを溶かされる。
「ん、あ――ん、んっ……」
犯されてる。俺、大和に犯されてる。
神経に刷り込むように心で唱えて、大和のものになっていく。わけもわからずやわらかいシーツの海で大和に沈んでいくのも好きだけど、こうして全部教えられるのもたまらない。大和はこんな顔で男の胸をいじめて、ぴんと硬くなってからも唇で含んで甘やかしてくれている。優しい獣の瞳に、熱を集めた下腹部が布を押し上げてきているのがわかった。早くこっちも触ってほしい。
「ぁ、あ、や……」
「ここだけでいきそうか?」
「や、ちが……」
ふるふると頭を横に振る。無理な体勢で背面から乳首を吸われる姿は自分で見ていてもおそろしくはしたなくて、劣情を誘うけれど。唇を膨らみにくっつけたまま、大和の手はするすると肌を下っていく。触ってもらえるかもしれないと悟った瞬間、甘く体中がしびれた。
寝間着と下着の布の下に早く触れてほしい。淡い期待がさらに昂ぶりの密度を上げて、ばくばく音が鳴ってしまいそうだ。
「あ……う、ぅあ、っ……」
「やらしい顔」
「そこ、さわって……」
その言葉に火をつけられたように、大和の手のひらがするりと肌をすべり降りる。下着ごと脱がされ、いとも簡単に裸に剥かれた自分と鏡の中で向き合った。
恥ずかしいから大和も脱いでほしいのに、天を仰いだ性器をたっぷり扱かれ言葉を失ってしまう。
「あ! ん、やぁ……」
大きな手のひらと、この力加減に弱い。瑛二の好きなことを全部知っている。
「えーじ、足……」
大和の声色にももう余裕はなかった。大きく張り出して後ろから押し当てられた大和の昂ぶりからもそれがうかがえる。太腿に手を添えられて広く開かされ、鏡には淫らなポーズで大和に支えられた自分の姿が映っている。こんな自分の姿は見ていたくないのに、後ろから大和に抱きしめられているオプション付きだから興奮してしまう。
首を上げて顔を見上げ、「大和」と呼ぶと思ったより近いところで「ん?」と声がした。
「いかなくて、平気……?」
「すげーいきてぇ」
「先に、大和……」
「いいのか」
「いい、よ」
息が上がって言葉が途切れる。
大和は瑛二の体を抱え直して、深めに腰を下ろさせた。いつも大和が入ってくるあたりに、布越しの性器が押し当てられる。こんなの、瑛二が先にいってしまう。
「……あっ」
ゆらゆらと、大和の両手は掴んだ瑛二の腰を揺らして、疑似的なセックスを楽しんでいるようだった。舌が乾いた動物みたいにはっはと呼吸は速く、いきたがっているのがわかる。
気持ち良くしたい。早くいかせてあげたい。片手を後ろにまわして布の上から撫でると熱くて驚いた。大和に気持ち良くなってほしい。でも、同じくらい瑛二も気持ちよくなりたい。この熱を、一番近いところで感じたい。
「やまと」
「ん」
「挿れて……俺の中で、いってほしい……」
「……おまえほんと、ドエロいな」
「なんでもいいから……」
こくりと頷き、後ろ手で大和のスウェットのふちを掴む。その手をそっと避けられて、「前向いとけ」と囁かれた。Tシャツを脱いで床に散らばし、下は行為に支障のない程度にずり下ろすのを鏡の中に見つめる。目が合って、胸がどきりと跳ねた。
濃さの違う肌色と肌色が触れ合っていると、鏡の中で境目がわからなくなってくる。
「体重、おれにぜんぶかけていいから楽にしてろよ」
広い胸板に背中を抱きとめられ、足で体を支えていなくてもいいように包んでくれる。背中を撫でた手が下降し後孔に触れた。やりやすいように前傾姿勢を取ると、もう片方の手が肩を掴んで逃がしてくれない。
爪を短く切り揃えた中指がふちを引っかいて、「まずい」と動きを止めた。
「え……」
「ぬらすもん持ってねぇ」
「ベッドのとこにあるの、取ってこようか」
「や、んなの待てねぇよ」
「すぐそこだよ……」
「指、なめてくんね」
中指と人差し指だけ立てて、目の前に差し出される。鏡の中にも同じ光景が広がっていて自分の瞳と目が合う。羞恥はすぐに消え失せてしまい指先を軽く舐めてから口に含んだ。
「ん……」
先端を受け入れると二本は自ら奥へ進んでくる。唇をすぼめると動きづらいのか強引に押し進んできた。含んだまま口を開いて舌を絡める姿は媚びているみたいで恥ずかしい。無理にされているわけじゃないのに、鏡の中の瑛二は大和の言いなりになっているみたく見えてぞくぞくした。下から上につーっと舐め上げて指と爪の間を惜しむように濡らした。この指でどうされるかわかっているから、たっぷり唾液を絡ませてから口を離す。
どうして繋がる部分は勝手に濡れてくれないんだろう。女の子みたいに。中指が狭いところに入ってくる。指でしてもらうのも好きだけど、しっかり慣らしてもらわないとできないことが時々煩わしい。盛り上がった気持ちがすっと冷めてしまわないか不安で。
「えーじ、体、おれの方にくれ」
「こう……?」
前に倒していた体を背中に預ける。後ろを探った手がやりづらそうで申し訳ない。でも足の裏や膝で支えられる自信がない。瑛二の肩を掴んでいた手が伸びてきて、性器を扱かれる。
「あ、あ――……」
「まだ、いくなよ」
「え、ぁ、やっ」
わかってる。大和も我慢してるんだから。背骨のラインに押し当てられた性器の感覚を味わいながら言い聞かせるのに、体はいうことをきいてくれない。とろとろ零れだした先走りで大和は三本目を後ろに食い込ませた。もう触ってもらえない性器はそれでも頭をもたげ、蜜をこぼしつづけている。鏡の中にそれを見つけ、目を伏せる。後ろから肩をやわく噛まれ、猫みたいな鳴き声をあげて射精した。
「さわってねーのに、いくなよ」
「ごめんなさい……っ」
「あやまんな。おこってねぇから……えーじ、前、向けるか?」
「ん……」
だらりと項垂れていた頭を持ち上げ再び鏡に視線を戻す――と、精液が床と鏡に散っていた。
「気にすんなよ。すげーやらしくてやばい」
ぬるぬると性器が背中をなぞって上へ下へと動く。だめだ、これ、感じすぎてどうにかなりそうだ。瑛二も腰を動かしたいのに、体を全部預けてしまって大和がしてくれないと何もできない。
「大和」
「ん……?」
「お尻……もう平気だから、して……」
「いいのか――?」
「大和だって、も、だめって感じ……」
「おれは瑛二みてぇに早漏じゃねーから」
「……いいから」
否定できないのが悔しい。大和相手限定だけど。
大和に触られると何もかもおかしくなる。いきたくて仕方ないとか気持ちいいことを我慢できないとか、自分らしくない。
腰を抱き上げられ、期待に心が浮かび上がる。怖くて目を閉じて、でも見てみたくて薄目を開ける。鏡の中に見た結合の瞬間は思ったよりずっと自然で驚いた。触れ合う。慣らされた部分がもっと拡げられて大和が入ってくる。頭のくびれまで飲み込んだくらいで動きが止まり、足の間で性器を啜っているのをまざまざと見せつけられ息が止まるかと思った。
「すげーエロ……」
「すごい……つながってる……」
「だな……もっと、奥、はいるぞ」
「ん……っ、ぁ、あ……」
先の方を飲み込んでおけばあとは案外ぴったりはまるもので、ぐっと奥まで受け止めて大和の上に座るようなかたちになった。開いた脚の間でぴったり結合した部分は繋がっているというよりも元々そうだったみたいで――しっくりくる、といえばいいのだろうか。ふちを指に拡げられながら、一番深いところで繋がり合うと全部の臓器が押し上げられるみたいに苦しいのに、嬉しい。
「はいってくとこ、やばかったな……」
「うん……」
「すげー、えーじ、おれでいっぱいになってんの、やべーな」
戯れみたいに性器を撫でられ、体がきゅうっと熱くなる。
「こんなん、たまんねぇ……」
「あ、ぁ、やぁ……」
「きもちいいか?」
「えぁ、あ、ひぁっ、ん……あ、きもちい……」
「おれも」
「あ、ぁ、ぁう、ん……」
ちゅ、ちゅ、と背中にたっぷりキスを浴び、また大和が鏡に顔を見せた。大和が見えるということは大和にもこの光景が見えているということで。繋がっている部分に指を這わすと大和もぬる、とそこに手を被せた。そのままゆっくり腰を打ち付けられ、「ぁあうっ」と甘ったるい声がもれる。
「ちゃんと見とけよ」
後ろから大きな手がまわされ腰を掴まれる。上下に動かされているのか大和が押し上げてきているのかわからない。けれど体の奥へ奥へと熱が追いやられ、余すところなく好きな部分を抉られる。
「あ、ぁ、だめ、だめ……」
「あ――えーじ、出る……ッ、いいか?」
「あ、ん、ぁ、あ……だして、やまと、だして……」
「あッ――」
「や、やめないで、あ、あっ」
熱いものが奥で弾ける。抜き挿しにあわせて白濁が後ろからこぼれて肌を伝う。いったばかりの大和の性器は一度じゃ満足せず、硬直を取り戻すとまた瑛二の熱を貪る。
「あ、あ……っ、や」
「クソッ、やばすぎだろ」
「あ、あ、あ、あ、あッ、や、いく、でちゃう」
「もーちょい、がまんしろ、えーじ……っ」
穴を親指に塞がれ、全身に甘い電流が駆け上がる。いきたい。でも出せない。いきたい、いきたい。いきたいいきたいいきたい。質量を増しきったものに思い切り突き上げられ、喉を震わせた。声にならなかった。ずるりと引き抜かれ、繋がっていたところからとろとろと大和の精液がこぼれ出す。
「やああっ!」
硬く腫れあがった性器を大きな手のひらにまとめて扱かれ、二人同時にびゅる、と熱いものを噴き出す。曇りない鏡がまた熱で汗をかいた。
すっかり服を着てベッドに戻ると、少し遅れて大和が隣に潜り込んできた。私用の方のスマホをいじりながら「えーじ」と呼びかけ髪を撫でる。
「あの動画消しちまうけど、見るか?」
「え? どうして?」
「……おまえのエロい動画見て抜くより、ねてる瑛二起こしてやる方がきもちいいってわかったから、いらねぇ」
つつ、と手が下ってTシャツの中に這わされる。足りなかったかな、とうかがうように振り返るとそのまま抱き寄せられた。汗ばんだ肌が瑛二の全部を吸い取るみたいに気持ちがいい。
「すげぇな、こないだの瑛二より、今日の瑛二の方がずっとエロいんだもんな。そんで今日のおまえより明日の方がまたエロいんだろーな」
「……大和も」
瑛二も背中に手をまわし、肩甲骨をなぞるように抱きしめると「ん?」とちょっと眠そうな声。
「この間より今日がかっこよかった……今日が一番きもちよかったし、今日が一番、大和のこと好きだよ」
「なんだ、鏡みてやんの、すきになったのか」
「そうじゃなくて……」
「……わかってる」
冬に吐く息みたいにもやのかかったような笑い声がして、顔を上げると唇が触れ合った。甘く胸がときめくのがなんだかくすぐったい。
部屋の電気を消す前、頭を持ち上げて鏡を見やる。汚れた部分がすっかりきれいになったそれも、映るソファも、ずっと前からそこにあったみたいにしっくりくる。俺の存在もそうだったらいいな、と腕の中で目を閉じた。
次は何を増やそうか。考えるだけで、わくわくする。
