やまえじ

15分の秘密

 じゃんけんのとき、いつも最初にパーを出す癖に気付いたのはつい最近のことだ。でも癖はすぐに直せないからこそ癖なのであって、今日も清々しく五本の指を開いて出した。掛け声は「じゃんけんぽん」ではなくて「分かれましょう」の方だが。 三、二、二、と…

Please xxx

 思えば、あいつの様子がおかしかったのは朝からではなく、その前の夜からだった。 大浴場で手短に風呂を済ませ、部屋に戻る途中で鉢合わせた。スマホでメールを確認していたらしい瑛二は大和と視線を合わせると、あ、と小さく口を開いて目線をそらし、また…

Look Look Look Back

 収録終わったから向かうね、とメールを受信したのはつい3分前のことだった。 久しく聴いていなかったインターフォンの音に、大和は渋々立ち上がる。スタジオからは乗り換え等々含め電車で40分弱、タクシーなら15分程度といった距離で、もう瑛二がやっ…

鏡を買った日

「行ってくる。戸締りよろしくな」 大和の家の洗面所で歯を磨いていると、家主が鏡を覗き込んで声をかけてきた。無造作に跳ねさせている髪を少しいじって、瑛二の頭をひと撫でしてから靴を履き、扉が閉まる。 この家、ここにしか鏡がないんだ――と思ったの…

なんにもいらない

 全員の手元に飲み物が行き渡り、手短な挨拶があって、乾杯。「とりあえず生」に混じって運ばれてきたレモンサワーのグラスを周りのジョッキと一通り合わせたあと、ようやく口をつけられた。さっぱりしていておいしい。一杯目からビール以外を一人だけ注文し…

愛をするということ

※リバです。大和が瑛二にいれたり瑛二が大和にいれたりしてます。※普段やまえじを書いてる人間が書いてます。    つけっぱなしの廊下の明かり、脱ぎ散らかした二人分の衣服。瑛二が作った夕食は、ラップもかけずに机に並んでいた。 今日ばかりは大和は…

ハート喘ぎのやまえじ

※綺羅とナギもナチュラルに付き合ってます。※「大和の自宅」という場所が出てきますが、寮とは別に大和が借りてる部屋がある設定です。いつも出てくる場所なので説明省きました、すみません。※台詞にハートマークが舞ってます。苦手な方はお気を付けくださ…

にじみだす

 ああ、いい匂い。 目の前のやわらかい感触に顔をうずめて呼吸を整える。同じボディーソープの香りにまじる薄い汗の匂い。好きだなあ、と改めて確かめるみたいに、胸から首筋にかけて鼻をこすりつける。大きな手に頭を撫でられる。嬉しくて、ふふ、と笑い声…

まどろんだあとの夢

 いやな夢を見ている途中だった。 小さく三回、部屋の扉をノックする音で現実に引き戻された。 音の主は申し訳なさそうにこちらを見上げ、持っていた枕を強く握りしめた。  一緒に寝てもいい? 共に歌う仲間であり、恋人でもある彼の頼みを断るわけもな…

june

 今年の梅雨入りは早かった。何を基準に早いとか遅いとか決まっているかはよく知らないし、去年の梅雨入りだって覚えていないけれど、関東の今年の梅雨入りは月曜だったからよく覚えている。朝の情報番組で「今年は早いですねぇ」と気象予報士が話すのを耳に…

may

 手のひらの中の小さな端末に、恋人の愛らしい笑顔が映し出される。溶けてなくなるんじゃないかと心配になるほどの、締まりのない笑顔。 瑛二が四月から朝の情報番組の月曜レギュラーになって約二ヶ月。緊張もだいぶ解けて番組の雰囲気や共演者たちに馴染ん…

april

 十八時半、駅の西改札で。 なにげない集合の連絡を愛おしく感じてしまうのはどうしてだろう。新鮮だから? 同じ事務所寮に住んで、一緒に仕事をすることが多いから、『待ち合わせ』という響きに、もうなくしたと思っていた初恋のようなときめきがこみ上げ…