やまえじ

いいところで終わるやまえじ

※中途半端なところまでしか書いていない未完成の小説です。色々ご容赦ください。   狭いラーメン屋の店内は、いつも通り昭和歌謡がぎりぎり聴こえる程度の音量で流れていた。ヴァンが券売機に紙幣を吸わせる音にBGMがかき消される。「二人とも何にする…

可愛いひと

少し未来のやまえじの話------------「お味噌はそっちにしまって……あ、マヨネーズはもうすぐ切れちゃうから、冷蔵庫ね」「はーい、これでおしまい?」「うん――あ、」「なに?」 脚立にのぼったままこちらを見下ろす大きな瞳を見つめ、瑛二は…

2024年エイプリルフールネタ

「原田さん」 咎めるような口調ではなかったのに、名前を呼ばれ原田左之助は肩を強張らせた。しゃがんだまま首を上げ振り返ると、立っていたのは沖田総司であった。「何してるんですか、こんなところで」「いや、ちょっとな」「あっ」 原田の頭の上から覗き…

純潔と戯れ

「はい、お茶入ったよ」 今朝花瓶にさしたばかりのカサブランカの香りをかぎながら、ティーカップを乗せたお盆をローテーブルに置いた。無機質なベッドに背をつけて雑誌を読んでいた大和は顔を上げ、「おう」と短く応える。あまり広くない一人暮らしの部屋に…

甘い熱と群青

 誰かに何かをしてもらってまで自分の望みを叶えたいなんて思ったことはなかった。周りには優しくて他人想いな人がたくさんいると思うけれど、みんながしたければすればいいし、嫌ならやらなければいい。そんな風にしか考えたことがない。 親にも、兄にもわ…

春のねどこ

 急に抱き寄せられておどろいた。 少し離れて眠っていたはずの大和の顔がすぐ近くにある。「どうしたの?」 胸の中に抱きしめられ、瑛二は笑いながら問いかける。あたたかくなってきたので少し薄くした掛け布団にくるまれて、両腕で瑛二を包み込んだ大和は…

#4 渚とシークレットデイ

 握り合った手がひんやりしていて驚いた。どうやらそれは自分も同じだったようで、肩を寄せ合った瑛二が吹き出す。「大和、もしかして緊張してる?」「……うるせぇ、瑛二もだろ」「俺は緊張してるよ」 絡んだ指が手の甲を撫でる。眉を下げ、困ったように笑…

#3 春あらし

 寝室を抜け出しベランダのカーテンを開けると、空気はまだひやりとしていた。向かいのマンションに視界を阻まれているこの部屋からは朝日がどんな風に昇ってくるのか見えない。けれどあたりの建物の反射で、もう完全に陽は昇りきっているのだとわかる。今何…

#2 薬指に約束

 新調したソファが届いたのは、三十日の夕方だった。年の瀬だというのにご苦労なことだ、と家具メーカーと配送業者を(心の中で)労った。 腰を下ろすと大和の身体を包みつつ押し返してくる。新しいのと交換で持って行かれたこれまでのソファがいかにくたく…

#1 苦いエンゲージ

 今でもあの日のことをよく覚えている。 寒さの厳しい冬だった。 眩しいスポットライト。五万人を収容できるホールは一面紫色のペンライトに埋め尽くされ、夕暮れの海のようだった。すその長い純白の衣装をまとった瑛二が大きな花束を片手に最後の挨拶をす…

誕2024

 瑛二、と耳元で名前を囁かれて抱きしめられると、すぐに何もかも忘れてしまいそうになる。 もう数えきれないほど重ねてきた行為なのに、大和に触れられるとどこも初めてみたいに瑞々しい快楽を兆すから不思議だ。スムーズな手付きで服を脱がされベッドに横…